結局は不倫なんだ。
どんなに好きだと言っても、どんなに会いたくなっても、何もかも捨ててまで手に入れたい相手なのかと問われたら、そうではない。
どの不倫でもそうだ。
そんなに不倫相手を愛しているなら、何もかも捨てて自分だけの物にするはず。
そうならない時点で、結局は遊びになる。
自分の家庭も、相手の家庭も壊してでも一緒に居たいのか?
子供と二度と会えなくても、不倫相手と居たいのか?
親や友達を失ってでも、不倫相手と居たいのか?
その位の覚悟があって初めて、本気の不倫と言えるだろう。
覚悟があって、そして貫けばその不倫は本物だ。
私はHさんに、
「会いたかった」
そう言ったすぐ後で、言った事を後悔した。
また不倫を望んでいるように思われたかもしれない。
私の【会いたかった】の意味は、
会ってあの時の事を話したかっただけのように思う。
今になって話せる事。
私との不倫はHさんにとって何だったのか。
あの5年はどんな時間だったのか。
Hさんにとって、私の妊娠はどう感じたのか。
なぜ不倫を繰り返したのか。
でも、今となっては聞いてどうするのだろうか。
聞いたところで、何とでも言える。
言葉なんて1番信用出来ない。
不倫する男の言葉なんて、信用出来る?
何度も嘘をついてきて、色んな人を騙してきて、そんな人の言葉なんか信用出来ない。
不倫するような人なんて、そんなもんだろう。
私もそう。
私もたくさんの嘘を平気でついてきた。
色んな人を騙してきた。
私は、自分という人間を信用出来ない。
Hさんの
「俺も会いたかったよ」
なんて、
「また不倫する?」
と、同じ意味だ。
とっさに私は、
「懐かしいって意味だけどね。」
と言って笑った。
また同じ事を繰り返すなんて、バカな人がする事。
一度失敗したら、同じ失敗は繰り返さない。
私は続けて、
「またどこかで偶然会うかもしれないし、もう二度と会わないかもしれないけど、元気でね。」
そう言った。
Hさんは、少し寂しそうな顔をして、
「そうだね。
キラリも元気でね。」
そう言って帰っていった。
私は、とても寂しくなった。
ポッカリと心に穴が空いたような感じ。
でも、これで良かった。
そう言い聞かせた。